釘の中で、1番メジャーな丸釘。
これって、メッキも何にも保護されていない、いわば、鉄むき出しの無防備な状態です。
でも、メッキをかけるのが面倒くさい、コストがかかるという理由で無防備なまま放置しているのではないのです。保護していないのには、それなりの意味があります。
今回は、そんなこんなで『鉄生地の丸釘、最強説』を唱えていきたいと思います。
なんで、鉄生地の丸釘は最強なの?
釘にも色々な材質がありますよね。ネジ屋なので思いつくだけ挙げてみると、鉄生地・鉄のメッキ品・ステンレス・真鍮・銅・・・。う~ん。たいして思い浮かびませんでしたが、まあまあ有りますね。
さて、問題です。この中で、1番錆びやすいのは、どれでしょう?
そう!もちろん、無防備な鉄生地。ダントツのNo.1!すぐに錆びます。どのくらい錆びやすいかっていうと・・・
水かければ、4時間くらいで赤錆でちゃうくらい、錆びやすいんですね。
でもこれ、釘の中では最強なんです。
錆って悪じゃないの?
赤錆って悪いだけのイメージがありますよね。もちろん、できれば錆は避けたいものです。ただ、釘に関しては少々、意味合いが変わってきます。
以前、他の記事で、『木は痩せる』って内容の記事を書きました。 読んでない方は、一読を。
(読んでいただいた事を前提にしますが・・・)
そうなんです。木材って段々とやせるんです。なので、釘を打っても、木の痩せに追従しないから締結力は段々と落ち込んでいくのです。
ところが、鉄生地の釘は、錆びます。これポイント。
釘だけの話ではないですが、鉄は錆びると⇒表面があれる⇒膨れる という段階を踏んで、最終の最終には消滅してしまいます。最終の最終を迎えるのは、相当な年月を経ての事ですが、そういう末路をたどります。
この、最終の最終にたどり着くまで、釘の錆は活躍するのです。
木が痩せるのに対して、釘は錆びで太ります。つまり、木材の痩せに対応できるんです。これがステンレスとかであれば、ほぼ錆びないので、木が痩せてきたら、打つ手なし!という状況に陥ります。
これ、すごくないですが。打ち込んだ後も、逆に締結力が上がる場合もあるんです。
木とのシンクロ率が高まると、どんどんと一体化していくのです。
なので、『鉄生地の丸釘、最強説』なのです。少しは、納得して頂けましたでしょうか?
あと、それに付随して、こんな話もあります。
昔の大工さんが釘を口に咥えていたのは、なんで?
昔の、てやんで~的な大工さんを思い浮かべる時、口に釘を咥えてませんか?今だと、エアー工具でパスパスッっと打ってしまいますが、金槌が主流だった当時は、釘を口に咥えながら打っていました。
あれって、口に咥えている事で、スグに取り出せるというメリットの他にも、意味があったんです。
それは、錆びやすくするってことです。鉄は濡れると錆びやすくなります。口に咥える事で錆の発生を誘発して、しっかりとした建築を行おうとしていたのです。(諸説あり・・・)昔の建築がしっかりしていたのは、こういった努力と知恵の結晶でもあるのです。
実際、鉄の釘ってどのくらいもつの?
どんな材質の釘であろうとも、錆びて朽ちていけば、いずれ消滅してしまいます。それが、鉄生地の釘は、他のものと比較して早いのです。
で、実際の耐用年数はというと、一概には言えませんが、屋外の雨ざらしの所で使用した場合、10年ほどで朽ちてしまうと思います。
屋内であれば、建築にも使用されるので数十年単位では問題なく使用できると思います。文化財レベルの建築でも鉄生地の釘は使用されていますので。
そのほか、釘を早く錆びさせる要因があります。例えば、木材に薬性の強い塗料を塗った場合・防腐処理された木材を使用した場合・色が赤っぽい木材を使用した場合など、金属の腐食を促進する働きがありますので注意が必要です。
まとめ
今回は、錆びてなんぼ!という釘の話をさせていただきました。このほかにも、火打ちカスガイなど、錆びる事で機能を発揮する商品もあります。
錆びと聞くと、良いイメージは、しないですが、黒錆とかも比較的いいヤツですし、一概に邪魔者扱いしてしまうのもいかがなものかなと思い直しました。
昔からあるものは、先人の知恵が何かしらあるものだと考えて使っていきたいと思います。