そもそも、メッキ?めっき?鍍金?って何。
金属、特に身近な鉄は、そのままだとスグに錆びてしまいます。
あまり、素地の鉄が身の回りにある場面は無いかと思いますが、素地鉄は条件が悪ければ10分程度で赤錆が浮いてきてしまうのです。
赤錆がでてしまった鉄は本来の性能を発揮できなくなり、どんどんと錆が進行していってしまいます。
これを食い止める手段として表面処理があります。
たとえば、油を塗ってみたり、塗装をしてみたり、メッキをしてみたり。
そうすることにより、鉄の上に層を作り鉄をガードしていくのです。
メッキはこの表面処理の中の一種です。
例えば、電気亜鉛メッキは、電気の力で液中で亜鉛成分溶かし鉄表面に析出させコーティングしていきます。ここにはイオンが介在したりしているのですが難しいので割愛します。
とにかく、錆を防止したいものの上に薄いコーティング膜をはることがメッキであると思ってください。
あっ。“メッキ”と書いていますが、日本語なので本当は“鍍金”・“めっき”が正解です。
ID金具に使用されている
黒亜鉛メッキってどんなメッキ?
ID金具の多くに使用されているのは黒亜鉛メッキ(亜鉛黒・黒色クロメート)です。
一番目にする機会の多い銀色のユニクロメッキと兄弟のメッキなのです。
ちなみに、個人的にはユニクロメッキ・クロメートメッキ・黒亜鉛メッキで3兄弟であると思っています。
3兄弟とも素地の鉄に電気亜鉛メッキをかけて、さらにクロメート層というコーティングを行います。
このクロメート層の種類の違いで兄弟が分かれてきます。
見た目も、銀色・黄色味がかった金色・黒色と個性を発揮しています。
そんな兄弟のなかで、ID金具に使用している黒亜鉛メッキはキレイな黒色で装飾用のメッキとしても使用されています。
塗装とは違い、メッキなのでムラが発生しますが、これを雰囲気として魅せるために黒亜鉛メッキを採用しています。塗装とは違い金属の質感が伝わってきますし重厚感もあります。IDでは、さらにわざとムラを多くする加工もしているのです。
メッキの耐食性は、これでわかる。
(耐食性の指標)
メッキの耐食性を確認する手段として、塩水噴霧試験というのがあります。
メッキした金属は、空気中ではなかなか錆びず、どのくらいの時間がたてば錆びてきてしまうのかを確認するには、ひたすら待つしかありません。
またメッキをかける時は、錆びるまでの時間を考慮して色々な膜厚(メッキ層の厚さ)の指定をします。これにより同じメッキでも錆が発生するまでの時間が異なってくるのです。
性能を知りたければ、ひたすら待つ。これは時間的に厳しいものがあります。
ですので、時間を短縮して錆びるまでの性能を確認する手段があります。
それが塩水噴霧試験です。
その字の通り、塩水を霧状にして決まった湿度・温度のなかで試験体に吹きかけます。塩分は腐食の促進効果がありますから、空気中よりかなり早く錆てきます。この時間がメッキの性能となります。
たとえば、塩水噴霧24時間という場合は、塩水噴霧試験で24時間はもちましたよ。ということになります。メッキや金属によって、白錆・赤錆など出てくるものは違いますが、この数値が参考となります。
目安としては、いちばん無難な銀色のユニクロメッキは塩水噴霧24時間以上なので、これを基準に錆びやすい・錆びにくいを考えていけば良いかと思います。
メッキの種類一覧
基本的にネジ屋なので、ネジの頭部写真でメッキの種類を説明しておきます。
なんとなくの色目は理解していただけると思います。難しい説明のものもありますが参考までに。
ユニクロメッキ
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電気亜鉛メッキの上に、光沢クロメート処理を行ったもの。処理液などの要因によりシルバーから青みがかった色味となる。塩水噴霧では、白錆発生まで24時間程度。六価クロムが含まれるためRoHS指令には不対応。
クロメートメッキ
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電気亜鉛メッキの上に、有色クロメート処理を行ったもの。やや緑がかった黄色から金色系の色となる。塩水噴霧では、白錆発生まで48時間程度。建築系の金具・ボルトに使用されることが多い。六価クロムが含まれるためRoHS指令には不対応。
黒亜鉛メッキ(亜鉛黒・黒色クロメート)
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電気亜鉛メッキの上に、硝酸銀などを含んだ液でクロメート処理を行ったもの。黒色にはなるが主に銀が化学反応をして色がでるため、形状により反応の差が生じる。膜厚は厚い部類であるが耐食性は他のクロメート処理と同程度。
三価クロメートメッキ
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ユニクロメッキ・クロメートメッキ・黒亜鉛メッキ等のクロメート処理を行うメッキは六価クロムが含まれている。これをRoHS対応のために三価クロムに置き換えたもの。六価では発揮される自己修復性がない。耐食性はユニクロメッキ同等。
三価黒色クロメート
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ユニクロメッキ・クロメートメッキ・黒亜鉛メッキ等のクロメート処理を行うメッキは六価クロムが含まれている。これをRoHS対応のために三価クロムに置き換えたもの。六価では発揮される自己修復性がない。耐食性は黒亜鉛メッキ同等。
ブロンズメッキ
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一般的にGBメッキと呼ばれるもの。下地に銅メッキをはり、特殊な薬品に漬けて表面を薄く黒く染め、研磨したもの。
ニッケルメッキ
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装飾用に用いられる光沢をもつキレイなメッキ。鉄との密着を高めるために下地に銅メッキを付けることが多い。耐食性は、亜鉛メッキ+クロメート処理よりも明らかに低く、メッキ自体にピンホールがあるために2重に(ダブルニッケル)される事が多い。
黒ニッケルメッキ
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ニッケルメッキの上に、黒色の亜鉛-ニッケルの合金メッキを薄くつけ、変色防止のためにニス付けを行ったもの。耐食性はニッケルメッキと同程度。
無電解ニッケルメッキ
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通常のニッケルメッキでは、電流や形状の関係で膜厚の安定しない場合があるが、無電解ニッケルは、ニッケルと燐の合金を溶液中で還元させて表面に析出させるためにムラがなく処理できる。電流の通らない樹脂にも処理ができる。
スズコバルトメッキ(代替えクローム)
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スズとコバルトの合金メッキ。スズコバと略される事もある。クロームメッキをやや青みがからせた色あい。つきまわりが良くガラでの量産も可能なため、クロームメッキの代替えとして使用されることも多い。耐食性はクロームメッキよりもやや落ちる。
クロームメッキ
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ニッケルメッキの上にクローム層をほどこしたもの。シルバーに美しく輝き装飾性が高いメッキ。表面はクロームの金属層になるので大気中ではほとんど変色しない。硬度が高く・耐摩耗性も良好。金具等にメッキの場合は、傷防止のため吊りメッキで行う。
バフクロームメッキ
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クロームメッキの前に素地にバフ研磨をかけて、表面を滑らかにしてから処理したもの。通常のクロームメッキよりも光沢・美観性に優れる。
黒クロームメッキ
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ニッケルメッキの上に黒色のクローム層をほどこしたもの。ガラメッキ(バレル)では、処理できないため吊りメッキで施される。1個ずつ冶具にかけてメッキするため、コストは高いが美しい黒に仕上がる。
銅メッキ
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銅特有の赤みを生かして装飾用として使用されることもあるが、変色しやすいため、最上層メッキよりも下層メッキとして使用される場合が多い。密着性に優れ、均一につくので亜鉛合金・鉄など幅広く下地として使用される。
真鍮メッキ
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下地はニッケルメッキ、その上に銅と亜鉛の合金である真鍮をメッキしたもの。色合いが金に近く、代金メッキと呼ばれる事もある。装飾用として使用されている。
代用金メッキ
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下地にニッケルメッキ、その上に銅と亜鉛の合金を貼ったもの。この合金は真鍮に比べ、銅の比率が高い。真鍮メッキと同様の処理だが、色合いがより金に近く仕上がる。
本金メッキ
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下地にニッケルメッキ、その上に金を貼ったメッキ。耐食性に優れており、装飾品や電子部品など幅広く使用されている。
スズメッキ
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大気中の安定性が高く、銀白色の光沢面が得られるので装飾用として使用される。また、人体への毒性が他の金属と比較して低いので缶詰の内側などに使用される。ブリキ板は、鋼板にスズメッキを施したもの。
ドブメッキ
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溶融した亜鉛浴内に漬けるメッキ。溶融亜鉛メッキ、天ぷらメッキとも呼ばれる。耐食性に優れるが、メッキが非常に厚い為、雌ねじに施す場合は、ねじ山がつぶれるのでオーバータップが必要。
パーカー処理
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リン酸塩被膜を生成させる処理の事を総称して呼ばれる。リン酸塩被膜処理とはリン酸塩の溶液を使用し、金属の表面に被膜を発生させる化成処理。塗装の前処理に使われることが多い。
まとめ
表面処理のなかの一部分である、メッキですがメッキだけでも多種多様なものがありますね。
ここで紹介できなかったものもたくさんありますし、新しいメッキがドンドン開発されています。
ID金具は見た目重視のメッキですが、外に使いたいからサビに強いものがいいとか、金色にしたいから金メッキが欲しいなど、ちょっとでも知識をもっていれば選択肢は広がってきます。
小難しい事が多いですが、頭の片隅の知識として活用していただければと思います。
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